帰化後の名前はどうやって決めるのか?
帰化して日本人になった後に名乗る名前は比較的に自由であることを説明する女性行政書士のイラスト。
法務局から帰化許可が下りれば、日本国籍を取得できます。
この時に申請者に戸籍が作られます。
そして戸籍には新しい名前が登録されます。
この記事では帰化後に名乗る名前の決め方や注意点についてご紹介します。
帰化許可後は新しい名前を使う人が圧倒的に多いです。
少し古いデータになりますが。
帰化申請者の85%が日本国籍を取得後に名前を変えたというデータがあります。
アンケート調査では以下の様な数字になっています。
国籍 同じ 違う 合計 韓国
37 190 227 朝鮮 2 5 7 中国 8 82 90 台湾 17 17 ブラジル 2 2 フィリピン 2 2 ペルー 1 1 イギリス 1 1 カンボジア 1 1 2 コロンビア 1 1 タイ 1 1 ベトナム 1 1 ボリビア 1 1 ラオス 1 1 合計 53 304 357
データの引用元:浅川晃広著『在日外国人と帰化制度』
著者のプロフィール
このデータを見る限り帰化前の名前を使用しているのは、全体の15%となっています。
サンプル数は多くはありませんが、大まかな傾向は掴めます。
帰化後の名前に関するルール。
帰化した後の名前付けに関する決まりを紹介する行政書士の画像。
帰化許可が下りた瞬間に、申請者は日本国籍を持つ日本人になります。
名前も日本人と同じルールの下で決めることになります。
名前に関する決まりをご紹介します。
・日本語であること。
・アルファベットは使用不可。
・名前に使える文字は、漢字・ひらがな・カタカナ
・夫婦揃って帰化した場合は夫婦同姓。
・同一の戸籍内で同じ漢字は使えない。
・一度決めると取り消し、やり直しは非常に厳しい。
・〆切は法務局に書類を提出するまで。
最低限のルールは以上の7つになります。
この決まりの範囲内であれば、好きな苗字と名前を付けることが可能です。
歴史上の偉人でも、スポーツ選手でも、使っていた通称名でも大丈夫です。
日本語表記の名前が必須
帰化後に使える名前は、原則的に日本語で表記されるものに限定されます。
もし母国の氏名を継続して使用する場合は注意が必要です。
中国語の略体字や台湾の繁体字は、日本で使用される漢字に変換したものを使用することになります。
例えば中国籍の「」さんは日本語に直すと「張偉」さんになります。
英語圏などの場合。
漢字圏以外の方の場合は、ひらがな・カタカナ・当て字を使用することになります。
有名な例を挙げると、サッカー指導者の「ラモス瑠偉」さんです。
この方の本名は「Ruy Goncalves Ramos Sobrinho(ルイ・ゴンサウヴィス・ラモス・ソブリーニョ)」と仰るそうです。
この本名を帰化する際に「ラモス瑠偉」という日本名にされたとあります。
(ちなみに命名者は奥様とありました。)
日本のルールだと、アルファベットの名前は不可なので、カタカナと漢字(当て字)にされています。
ラモス瑠偉選手の名前は以下のサイトより参照しました。
ラモス瑠偉公式サイト
URL:http://ramos.jp/profile.html
使える漢字にもルールがあります。
帰化後の名前は、ひらがな・カタカナ・漢字のみとなっています。
使える文字も実は決められています。
帰化後の名前で使える漢字は2種類の表の中にあるものに限られます。
・常用漢字表
・人名用漢字表
漢字の種類は常用漢字表で2163字で人名用漢字表に863文字の合計2999種類の漢字の中から選択することになります。
この表に書かれていない漢字(旧字)は使用することが出来ませんのでご注意くださいね。
常用漢字表と人名用漢字表は下記のサイトからダウンロードできます。
法務省:子の名前に使える漢字
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji86.html
常用漢字表は160ページとボリュームがあります。
日本人同士の夫婦は同姓になります。
夫婦そろって帰化する場合、夫婦の一方が日本人の場合、苗字は夫婦同姓になります。
夫の苗字にするか、妻の苗字にするかを選択する必要があります。
帰化許可申請の手引きにも明記されています。
夫婦または日本国民の配偶者が申請するときは、帰化後の氏については夫又は妻のいずれの氏によるかを()内に明記してください。
引用:法務省発行:帰化許可申請の手引き
同一の戸籍内では同じ漢字を使うことが出来ません。
これは帰化のルールではなく、戸籍の決まりになります。
・一つの戸籍内で、同じ漢字は使用不可。
・同じ読みの名前を付けることは可能。
例えば「カズヒロ」という名前を例にとると・・・
父親が「和弘」の場合、同じ戸籍に入る子供は「和弘」の文字を使用することが出来ません。
しかし親子や兄弟で同じ「カズヒロ」の名前を付けることは出来ます。
もし父親・長男・次男・三男の4人が全員「カズヒロ」もアリです。
「カズヒロ」の漢字を全員違うなら問題ありません。
・父親「和弘」
・長男「和博」
・次男「和宏」
・三男「和広」
このように文字が違えば、戸籍上では大丈夫になります。
(日本では同じ名前を付けることは無いです。)
一度決まった名前を変えるのは、ほぼ不可能です。
帰化許可が出た後に、申請書に書いた名前を変更することは、不可能に近いです。
帰化許可者に限らず、元々の日本人でも改名手続きは困難を極めます。
どうしても改名したい場合は、家庭裁判所で改名手続きを行う必要があります。
正確な手続き名は「名の変更許可」と呼ばれるものです。
裁判所のウェブサイトの文言を引用すると
正当な事由によって,戸籍の名を変更するには,家庭裁判所の許可が必要です。正当な事由とは,名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合をいい,単なる個人的趣味,感情,信仰上の希望等のみでは足りないとされています。
引用:裁判所、名の変更許可
URL:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_20/index.html
申請書を見ると、申し立ての理由は8つに限定されており、変更するための詳細な事情を記載する必要があります。
帰化した後の名前は慎重に行ってください。
気に入らなくても、後で変えることは出来ないです。
名前は法務局に書類を提出するまで。
帰化後の氏名には、締切があります。
法務局に帰化申請書を提出するまでです。
申請書に日本国籍を取得後の名前を記入する欄があります。
そこに書いた名前が、許可後に戸籍に登録されます。
帰化後の本名は慎重に
ここからは帰化後に使う名前を付ける時の注意点をご紹介します。
一度戸籍に登録されると、滅多なことでは変更することが出来ません。
一生使う名前ですので、慎重に慎重に決めてくださいね。
最後に帰化のジャンルでは、あまり語られれない話を一つだけ。
PCやスマホで簡単に変換できない難解な文字を使うことはお勧めしません。
現在は役所も病院も学校、会社など、名前を登録する場所ではPCを利用します。
パソコンで変換が出来ないと、普通の文字で印刷された文書が出てきます。
(昔のPCなどでは、文字化けした状態でプリントアウトされるケースも。)
旧字体など難しい漢字を使用すると、電話などで自分の名前を説明するのも非常に苦労します。