帰化が出た後の取り消しと無効は、日本国籍の取得を検討する際に気になる問題です。
帰化申請の取り消しと無効について解説する女性行政書士のイラスト。
帰化申請する人で、気になることは二つあります。
一つ目は自分が帰化することが出来るのか?
もう一つは取得した日本の国籍が取り消されないか?
帰化が取り消されたら、日本で暮らすことが出来るのか?
国家公務員など日本国籍が無いと就けない仕事をしていた場合は?
一緒に取った家族の日本国籍はどうなるのか?
また日本は二重国籍を認めていない国です。
万が一、帰化が取り消されり無効になってしまえば、最悪の場合には無国籍者になる可能性があります。
この様に帰化後に日本国籍を喪失すると、様々な影響があります。
この記事では重要な問題を含む帰化許可の取り消しと無効について、ご紹介します。
このコンテンツの答えを先にご紹介します。
結論だけ先に書きますと
余程のことがない限り、
帰化を取り消されて、日本国籍を喪失することは無いと思います。
制度的には可能でも、取り消された事は一度も無いことからも考えても。
帰化の取消し
・帰化の取り消しは理論上は可能。
・取消した場合のマイナスの影響が大きく広範囲で事実上は帰化の取り消しは困難。
・現在まで帰化を取消された事は一度もない。
帰化の無効は二種類のケースがあります。
・既に日本国籍者に帰化許可を出した。
・帰化する意思がない人に許可を出した。
帰化申請の性質
帰化許可は日本国籍を望む外国籍の申請者に対して、法務大臣が自由裁量で国籍を付与する行政処分です。
行政処分である以上は、理論的には処分の無効と取消しが存在します。
帰化が無効になる場合とは、許可処分に重大かつ明らかな瑕疵がある場合です。
帰化が無効になるケース
帰化が無効になる場合を説明する行政書士のイラスト。
帰化が無効(最初から無かったことに)になるのは、2つのパターンしかありません。
一つ目は日本人(帰化許可者含む)に対して、帰化許可を出した場合。
二つ目は、申請者が日本人になる意思がないのに、帰化許可が出た場合。
帰化許可が無効になるパターンを9つほど取り上げます。
最初の1個だけが国籍認定の誤りで、それ以外は帰化意思の欠如です。
この事例を見ても、普通に考えても簡単には起こりえないような事例が多いです。
実際に発生したら、新聞沙汰は間違いなしと思います。
①日本国籍を既に持っている人に帰化許可を出してしまった。
(日本人に日本国籍を付与しても意味がありません。)
②帰化する意思がない人に許可を出した。
③他人が勝手に帰化申請を行って許可が下りてしまった。
④15歳未満の申請者で、法定代理人以外の人物の手によって申請されて帰化許可が出てしまった。
(15歳未満の子供が帰化するには、基本的に親と一緒である必要あり)
⑤代理権を有しない法定代理人が15歳未満の子供の帰化申請を行い許可が出た。
(親権などを持たない人物は子供の申請をすることが出来ません。)
⑥帰化申請の審査中に申請が取り下げられた後に許可が下りた場合。
(撤回後の帰化許可は、本人の意思を欠くので無効です。)
(取り下げは本人か15歳未満の場合は法定代理人が行います。)
(取り下げは、帰化許可が出る前に行う必要があります。)
⑦既に亡くなっている人に帰化許可
(帰化の効果の発生は生存者のみです。)
⑧帰化申請が第三者の強迫によって行われた場合。
(強迫が抵抗できないほどに強い場合。)
(本人の意思に関係なく、申請を強いられたので無効になります。)
⑨官報に告示された内容と申請人との同一性がない場合。
(官報に掲載された人物と申請者が別人の可能性がある場合。)
帰化の取り消し
帰化許可が取り消される場合について、女性行政書士が開設する画像。
次は帰化許可の取り消し処分について。
現在のところ、帰化を取り消された方は存在しません。
取り消しの影響を考えると、簡単に執行できないからです。
取り消した事実が無いことを法務省が証言している判例があります。
東京地方裁判所にて平成14年の12月25日に出された裁判の判決です。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=15238
裁判そのものは帰化の取り消しではなく、帰化の審査基準の情報公開に関するものですが、
法務省の言い分に取り消しの事実が無いと書かれています。
法務省の意見はコンテンツ下部の「全文」と書かれた場所をクリックするとPDFが出てきます。
そこに書かれています。
帰化の取り消しは難しい。
上記の判例に書かれた内容を簡単にまとめてみました。
日本の国籍法には帰化の取り消しの条文は存在しません。
しかしながら、帰化許可も法務大臣が行う行政処分である以上は理論的には取り消しすることが可能です。
これは法務省も出来ない事はないと明言しています。
法律的には可能でも、実行するのは非常に難しいです。
何らかの事情で取り消した場合のマイナス面での影響の大きさを考えると。
帰化は外国籍から日本の国籍に変更するための手続きです。
帰化の効果は申請者本人だけに留まらずに、その親族や勤務先や様々な契約の相手方にも重大な影響を及ぼします。
これを取り消したとすると、ダメージは帰化申請を行った本人だけでは済まないという点です。
また日本国は二重国籍を認めない体制になっています。
帰化する場合は、元母国の国籍を放棄することが条件です。
万が一、日本国籍を取り消すとなると、場合によっては無国籍となってしまいます。
元母国の国籍が復活できない場合は完全に無国籍です。
多くの国では元国民が国籍を復活させる法律がありますが、100%可能かどうかは別問題です。
例えば日本なら、
日本にも簡易帰化の要件で、
日本の国籍を失った人で、日本に住所を有する者は帰化申請することで、再度日本国籍を取得することができます。
国籍法第八条の三号に、日本国籍の回復の規定が存在します。
国籍法第八条の三号
日本の国籍を失った者(日本に帰化した後に、日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有する者。
国籍の回復は、一般の帰化よりも条件が緩和されております。
これについては、当サイトの別ページにてご紹介しております。
ご興味のある方は、御覧になってください。
韓国にも国籍の復活制度があります。
お隣の韓国にも大韓民国国籍法第9条に国籍の回復の件があります。
参考までに条文を掲載いたします。
大韓民国国籍法第9条
大韓民国の国民であった外国人は、法務部長官の国籍回復許可を得て、大韓民国の国籍を回復することができる。
韓国の場合は国籍の回復は条件付きであることがポイントです。
国籍の回復ができない条件は以下の通りです。
・国家や社会に危害を及ぼした。
・兵役を忌避する目的で外国に帰化した。
・品行方正でない者。
・法務長官が不適当と認めた者。
この様に国籍の回復の制度がある国でも、取り消された人が回復できることを法務局は保証することは出来ないです。
法務局の担当官にとっても帰化手続きは失敗が許されない業務です。
帰化の取り消しは、影響の大きさを考えると簡単に執行することが出来ません。
だから法務局は、帰化を取り消すような状況に至らないように慎重な審査を行っています。
そのために法務局の担当官は、申請者の正確な情報を得るために、様々な資料の提出や面接に訪問調査などを行います。