日本人配偶者が帰化するための条件
日本人と結婚した場合の帰化要件を紹介する女性行政書士のイラスト。
この記事は日本人と結婚した外国人配偶者が、日本国籍を取得する場合についてご紹介します。
日本人と結婚したので帰化する人は、かなり居られます。
とあるアンケート調査では、帰化した理由の第4位が結婚したから帰化すると答えております。
359名中、23名が該当します。
これだけ見ると、多くなさそうですが、第2位の「子供に日本国籍を与えたいから」を加えると帰化許可者の3分の1が結婚関連に該当します。
このアンケートについての詳細は、当サイトの別記事でご紹介しております。
ご興味のある方は、そちらもご覧ください。
日本人の配偶者は簡易帰化になります。
日本人の夫・妻の外国人は国籍法5条ではなく、第7条が適用されることを説明する行政書士のイラスト。
日本人と婚姻関係にある人は、普通の外国籍の方より帰化の要件が緩和されています。
国籍法で言うと、第7条が適用されます。
条文はこのようなものです。
読みやすくするために、ポイントごとに文書を分けました。
国籍法第7条
日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、
法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。
引用元:法務省民事局の国籍法のページ
日本での滞在歴と年齢条件が緩和
日本人配偶者が日本国籍を取得する手続きを受けるための条件を紹介する女性行政書士のイラスト。
端的に言うと日本での居住要件が緩くなっています。
あとは年齢要件が免除されています。
(母国での結婚年齢を超えていれば帰化できます。)
パートナーが日本人になるには、残りの5要件を満たせばOKです。
残りの要件は下記のとおりです。
・素行要件・・・税金や年金の完納、交通違反や前科の有無など。
・生計要件・・・家族の収入で生活可能であること。
・喪失要件・・・二重国籍はダメです。
・思想要件・・・危険な考えを持っていないこと。
・日本語能力・・N3または小学校3年生レベル。
これらの要件の詳しい解説は、当サイトの別コンテンツで掲載しております。
ご興味のある方は、こちらもご覧になってください。
日本人の配偶者に求められる条件
国籍法第7条の簡易帰化が適用される場合は、下記の2通りです。
① 日本人と結婚(新婚でもOK)+3年以上の日本滞在歴。
② 3年以上の結婚生活+1年以上の日本滞在歴。
①の具体例
・留学生などで3年以上、日本で暮らしていた方が日本人と結婚した場合。
・日本で仕事を3年以上続けて、付き合っていた日本人と結婚した。
①の条件では、結婚期間の長さは問われていません。
(結婚生活の長さで法務局の審査の厳しさは変わりますけども)
②の具体例
・海外で結婚して、外国暮らしが長い夫婦。
彼らが日本に帰ってきて、1年以上暮らしていた。
・外国で仕事をしていた日本人が、現地で結婚しました。
転勤や転職などで日本に帰ってきて1年以上経過した。
②の条件では、外国人夫や妻は1年間、日本で滞在していれば要件を満たします。
在留資格「日本人の配偶者等」でなくてもOKです。
①と②の要件を満たすためのビザは配偶者ビザや結婚ビザである必要はありません。
高度人材ビザでも就労ビザでも留学ビザでもOKです。
その代わり正規のビザ(短期滞在を除く)を持っていることが大前提です。
オーバースティ状態の人は、何年日本で暮らしていても帰化の対象になりませんのでご注意ください。
帰化申請する外国人配偶者が、日本人と夫婦である実態が伴っていれば問題なしです。
夫婦が同じ屋根の下で、協力し合って生活していれば条件を満たします。
国際結婚した外国籍の方のビザが、就労ビザや高度人材ビザのケースも珍しくありません。
独立精神が旺盛な方や就労ビザのままでも別に支障がない方、ビザの変更が面倒な方。
もしくは高度人材ビザのように、配偶者ビザよりも優遇されている場合に見られます。
就労経験の有無について
一般の外国人の帰化では、滞在歴に5年間のうちに最低でも満3年以上の就労経験が要求されます。
これは条文には書かれていませんが、就労ビザでの社会人経験がないと法務局から許可が下りないようになっています。
ちなみに「就労経験」は在留資格「技術・人文知識・国際業務」などのビザでの勤務をさします。
正社員や契約社員、派遣社員などが該当します。
留学生や家族滞在ビザのアルバイト経験は、年数にカウントされません。
本題に入りますね。
日本人と結婚して国籍法第7条の要件で帰化する場合は、就労経験が無くても大丈夫です。
日本人配偶者の収入で生計が成り立っているなら、普通に帰化ができます。
日本人と結婚している場合の生計要件
日本人と結婚したパートナーが専業主婦(夫)でも、同居親族単位で自力で生活できれば生計要件を満たすことを紹介する画像。
普通帰化の場合は、外国人本人が満たす必要があります。
日本人と結婚した方は、本人が働いていなくても、家族単位で生計が成り立てば問題ありません。
生計要件も多少、緩やかに解釈されております。
年金や税金の支払いは完納が絶対です。
日本人と結婚で気化する場合でも、免除されない条件に「年金や税金に支払い」があります。
少しくらいは見逃して貰えそうな気がしますが、全額支払っていないと許可が下りません。
あと日本人の配偶者の場合、普通の外国人よりもケース分けが複雑になります。
税金について
日本人と婚姻関係にある外国人の税金は帰化で重要な問題だと説明する行政書士のイラスト。
住民税に関しては、3つのケースがあります。
・専業主婦(夫)で日本人の扶養家族に入っている。
・日本人家族の扶養家族ではない。
・申請者が自営業者や会社役員の場合。
日本人の扶養家族に入っている。
専業主婦(夫)で、日本人配偶者が会社員で天引きされている場合は、問題は特にありません。
会社が社員の税金をまとめて支払ってくれているからです。
この場合は未納が問題になることは有りません。
この場合でも結婚前に住民税の払い忘れがあれば、全額支払う必要があります。
あとは扶養していない人が扶養家族に居ないかだけです。
いる場合は扶養を外して修正申告して下さいね。
日本人の扶養家族ではない場合
パートやアルバイトで年収が130万円を超えている。
あとは共働きの人などは、扶養家族から外れています。
この場合は、自分で住民税や所得税を支払う必要があります。
支払い忘れがあれば、完納してから納税証明書の手配をする必要があります。
自営業者や会社役員の場合
日本人と結婚している方が、自営や会社経営者という場合もあります。
在宅でフリーデザイナーなどをしているケースも該当します。
この場合は注意が必要です。
自分の税金と事業と会社の税金も全額支払い済みでないと帰化できません。
年金も要件に含まれます。
年金の支払いが完納できていないと日本人の配偶者でも帰化できないことを説明する女性行政書士のイラスト。
昔は要件ではありませんでしたが、今は年金の加入と支払いも立派な要件です。
これも夫婦の状況で条件が大いに変わってきます。
① 日本人の扶養家族に入っている場合。
配偶者の会社が社会保険完備で天引きされている場合。
② 扶養家族だけども、国民年金や国民健康保険の場合。
③ 扶養家族から外れている場合。
④ 帰化希望者が自営業や会社役員の場合。
① 扶養家族で第3号被保険者の場合
①申請者が扶養家族であり、配偶者が会社員や公務員の場合ですね。
この場合は日本人配偶者は年金に支払いを免除されています。
いわゆる第3号被保険者というヤツですね。
この場合は年金や税金の支払いが問題になるケースは少ないです。
(結婚前の税金や年金の支払いは別ですけども。)
② 扶養家族だけど配偶者が国民年金
日本人の配偶者が社会保険に入っていない会社だったり。
フリーなどの自営業だった場合は、申請者は扶養家族でも国民年金の支払い義務が発生します。
以前から国民年金に加入して、全額支払っていれば問題なしです。
年金に加入しているけども、支払い漏れがある場合は未払い部分を完納してください。
そして国民年金に加入していない場合は、年金に加入する必要があります。
さらに過去1年分の年金を支払いが要ります。
1年分の領収書を法務局に提出しないと帰化できません。
この場合は20万円ほど出費があります。
日本人として生きる以上は、公的な義務をキチンと果さないとダメですよという意味ですね。
③ 扶養家族から外れている場合
共働きで年収が130万円を超えている場合ですね。
会社で天引きされていない限りは、国民年金を支払う必要があります。
要件は②と同じなので説明は省略します。
④ 申請者・日本人配偶者が自営業、会社経営者の場合
このケースが一番、大変かなと思います。
申請者・配偶者が自営業者の場合、国民年金の支払いが必要です。
条件は②と同じです。
あとは自営業で発生した住民事業税なども完納する必要があります。
夫婦の何れかが会社経営の場合は、話が面倒な部分があります。
株式会社など法人は、厚生年金と健康保険の加入が義務付けられています。
会社で社会保険に未加入の場合は、厚生年金に加入する必要があります。
そして過去1年分の国民年金の支払いをしなければなりません。
その証拠になる書類を法務局に提出しないといけません。
・・・と以前はここまでやれば、帰化許可が取れました。
しかし今はそれだけでは足りません。
さらに厚生年金の1年以上の支払い実績が必要になっています。
会社経営者で社会保険未加入の方は、最低でも1年間は帰化申請を待つ必要があります。
国籍法第7条での帰化の注意点
ここからは日本人と結婚した方が帰化する場合の注意点をご紹介します。
まず日本人と結婚しても、法務省の審査が簡単になりません。
状況によっては、むしろ厳しい審査になる場合もあります。
時折、耳にする話で日本人と結婚したら確実に帰化できる。
もしくは即座に帰化できる、またはある程度のデメリットは見逃して貰えるというものです。
結論だけ言うと、そんなことは全くありません。
最近の帰化申請は永住ビザ寄りに
日本の不思議なところは、永住ビザよりも日本国籍を取得するほうが条件が緩やかだったりします。
しかし直近の傾向では、帰化も永住ビザに近い条件が必要な場合があります。
例えば申請者の在留資格が1年や半年では許可が出難くなっています。
今は配偶者ビザでも3年以上ないと難しいです。
(事実上、結婚して直ぐの帰化申請は厳しくなっています。)
要件を満たしてスグ申請は訪問調査が入りやすい
国籍法第7条は結婚して、1年もしくは3年間日本に滞在していれば、応募条件を満たします。
要件を満たして即座に帰化申請した場合は、訪問調査が入ることを前提で話を進めることをお勧めします。
高確率で自宅訪問や近隣調査が入ります。
理由は日本国籍を取得するための偽装結婚の疑いを持たれるからです。
本当の夫婦であるかを現地調査して、申請書類の裏を取りに来ます。
素行要件は普通帰化の場合と同じ
日本人の配偶者や特別永住者の帰化申請で最大の難関は素行要件です。
交通事故や前科の有無、在留状況、年金や税金の支払いなどです。
素行要件の審査は普通の外国人と同じレベルを求められます。
素行要件に関する詳しい解説は別コンテンツにあります。
ご興味がある方はそちらの記事もご覧ください。
在留特別許可の方は条件が変わります。
オーバースティから在留特別許可を取得して日本に滞在する方も帰化することは可能です。
その代わり一般の方よりも条件が厳しくなります。
在留特別許可の許可日から10年の期間が必要です。
まとめ
ここまで日本人と結婚した外国人が帰化する方法をご紹介してきました。
国籍法第7条が適用される簡易帰化になります。
普通帰化に比して居住要件と能力要件が緩やかになっています。
一般の外国人が日本国籍を取得するよりも、多少簡単になっています。
簡単になっているのは条件だけで、審査自体は緩くなっていません。
帰化は条件さえ満たせば、高確率で許可される性質の許認可です。
ですので頑張れば、帰化することは可能です。