帰化申請の素行要件
帰化申請の素行要件を説明する行政書士の画像です。
素行要件は国籍法第5条1項3号に書かれている要件です。
簡単に言うと、日本社会のルールを守る真面目で善良な住民として暮らしていますか?
条文では一行しかありません。
素行が善良であること
とてもシンプルで美しいです。
しかし善良であると言うのは、かなり抽象的ですね。
帰化申請者の生活全般を見るのが素行要件です。
国籍法に書かれた帰化の条件は、全体的に抽象的です。
細かい部分は政令や省令などの別の規則で定められています。
帰化申請の審査で問われる内容は以下の4つです。
・税金を払っていること
・年金を払っていること
・交通違反がない(若しくは軽いものがある程度)
・前科がないこと
ここから個別に、ご紹介いたします。
税金を支払っていること
普通帰化で納税義務が必要なことを紹介する女性行政書士のイラスト。
国民の義務に納税の義務があります。
義務である以上は滞納や脱税などは御法度です。
そして帰化許可が出た人も当然ながら日本国民になり納税の義務が発生します。
(最も在留資格を得た段階で納税の義務はあるのですけども。)
帰化で問われる納税の義務は申請者の状況によって、微妙に変わってきます。
会社員の場合
申請者が会社員の場合は、二種類に状況が分かれます。
・会社で天引きされている。
・天引きされていない人。
会社で住民税などが天引き(特別徴収)されている方は、納税関係で問題は発生しにくいです。
給与をもらう段階で、税金が支払われているので、滞納などの問題がありません。
天引きされていない方は、納付書をもってコンビニなどで自分で支払います。
たまに住民税などを払い忘れている場合があります。
払い忘れた状態で帰化申請しても、法務局の窓口で門前払いされます。
(法務局の担当官に書類を受理してもらえない。)
税金の払い忘れがある場合の対策は一つしかありません。
全て支払ってから、納税証明書を取得することです。
専業主婦・夫などの場合
今度は申請者自身は働いておらず、配偶者が会社員などの場合です。
専業主婦・夫の納税はゼロ円ですから、未納も滞納もありません。
その代わり、働いているパートナーの納税状況が審査で問われます。
たとえ配偶者は帰化しなくても、働いている方の納税証明書を提出しなければなりません。
未納であれば、審査に入る前の段階で弾かれます。
解決法は未納や滞納している税金を支払ってキレイにすることです。
帰化申請は申請者自身だけではなく、自分の周囲の人も審査されるのが特徴です。
自営業者、会社役員の場合
今度は申請者が自営業や会社経営者の場合です。
経営者の場合はサラリーマンより、条件が厳しくなっています。
それは申請者本人だけでなく、会社やビジネスの納税状況も審査されることです。
申請者ご自身の住民税などが完納していても、会社に課せられた税金で滞納や未払いがあると・・・
やはり法務局の審査に至らずに、書類の提出段階で審査が終了します。
帰化の許可率は低い時で70%で高い時は97%を超える非常に高いものです。
この高い許可率は審査に入った書類の合格率です。
実際の許可率は50%以下とも言われています。
審査に入る前の窓口で、要件が揃っていないと受理されません。
帰化の審査はダメな場合は窓口で弾かれます。
会社役員や自営業者が帰化する場合は、自分と会社の税金の両方に気を付ける必要があります。
扶養家族にご注意あれ
帰化申請で対象外の人を扶養家族にしている場合は外して修正申告することを説明する女性行政書士のイラスト。
納税関係の要件で気を付けるものが、もう一つあります。
それは扶養家族です。
申請者が自分の家族を扶養に入れていると、税金が安くなります。
扶養家族を沢山入れていると、ケースによっては税金がゼロ円というケースもあります。
(今は扶養家族に入れるのも大変だから少なくなっていますが。)
帰化で問題になるのは、本来は扶養家族にならない人を扶養に入れている場合です。
良くあるのが、
・年収が103万円を超える配偶者
・元気な本国の両親や兄弟姉妹
扶養控除のことを紹介する国税庁のウェブサイト。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
今は日本国外の親を扶養家族にするのも、難しくなっていますね。
金融機関の送金証明書かクレジットカードの明細で外国の家族に送金したことを客観的に証明できないと無理です。
配偶者の年収が高すぎる
配偶者が家計の応援のためにパートやアルバイトをすることは珍しくありません。
ただ年収が高くなりすぎると扶養から外れることになります。
これを外さずに扶養家族に入れっ放しにしていると、素行要件を満たさないと法務局の担当者から突っ込みが入ります。
配偶者の納税証明書や在勤証明書などでバレます。
本国で生活するご両親やご兄弟の場合
本国で生活する家族を扶養家族にしている場合も注意が必要です。
扶養家族の要件を満たしていれば、別に問題は無いです。
しかし・・・
母国の家族が現役バリバリで働いていたり、亡くなっているのに扶養家族に入れていると厳しいです。
扶養家族を増やして、本来支払うべき税金を納めていない形になります。
当然ながら帰化許可も厳しい結果に成りかねません。
母国の亡くなっている親族を扶養家族にしている場合は100%バレます。
母国から取り寄せる家族関係の書類と、申請者の納税証明書の内容が一致しないことで。
書類上は亡くなった人を扶養家族にした形になっています。
対処法は扶養を外して、差額の税金を支払うこと
対象外の人を扶養に入れて税金を安くしている場合は、扶養を外して修正申告して税金を納めることです。
税金関係の要件はキチンと税金を支払うことでクリアできます。
年金について
帰化申請で年金の支払いも義務になっていることを説明する行政書士のイラスト。
帰化の要件に年金が加わったのは2012年の法改正からです。
それ以前の方には関係のない項目でした。
これも申請者が会社員か自営業者、会社役員かで対応方法が変わります。
基本的には納税関係と同じです。
会社員の場合
サラリーマンの場合は2種類に分かれます。
・厚生年金が天引き
・自分で国民年金
社会保険完備で厚生年金が給与から天引きされる方は問題はありません。
社会保険に未加入の方は、国民年金を納める必要があります。
国民年金で支払い忘れが無いかを確認してください。
たまに外国籍の方で年金に未加入の方がおられます。
未加入のままだと、帰化申請することは不可能です。
年金に未加入の方の対処法は
・過去1年分の国民年金を一括払い。
・これからの年金をキチンと支払う。
年金の場合は税金と違って、過去1年分の未払いだった年金を払う必要があります。
会社役員の場合
会社経営者や取締役をしている人は、年金要件も厳しいです。
下記の要件を全部満たす必要があります。
・会社と自分の厚生年金加入
・両者ともに社会保険料を完納している
株式会社などの法人は厚生年金と健康保険の加入が義務になっています。
年金の要件も国民年金ではダメで厚生年金の加入が必須となります。
万が一、会社で厚生年金に未加入の場合の対処法は
・厚生年金に加入する
・過去1年分の国民年金を支払う
厚生年金の加入届と1年分の国民年金の領収書を提出する必要があります。
自営業者の場合
帰化申請者が自営業の場合は、ちょっとややこしいです。
従業員の人数で厚生年金か国民年金に分かれるからです。
・従業員が5人以上
・従業員が5人以下
従業員が5人以上
この場合は個人事業主でも厚生年金に加入義務があります。
年金要件の対策は、上記の会社役員の場合と同じです。
未加入なら厚生年金に加入して、過去1年分の国民年金を支払うことでOKです。
加入していても未払いならば、完納する必要があります。
従業員が5人以下
国民年金の支払いがキチンとされていれば問題なしです。
未納の場合は、未払い部分を全額支払いましょう。
未加入だった場合は、加入して過去1年分の支払いを済ませ。
これから発生する年金をキッチリと払いましょう。
交通違反も帰化申請で重要な審査項目
帰化申請では5年間の交通違反歴がチェックされることを説明する女性行政書士のイラスト。
自動車運転免許を持っていない人には無関係な要件です。
免許を持っている人だけが対象になります。
具体的な要件は
過去5年間の道路交通法違反歴を確認されます。
審査の方法は、自動車安全運転センターと呼ばれる団体が発行する運転免許履歴証明書に記載されている情報をもとに行われます。
目安は
過去5年間に軽い違反が5回前後
(スピード違反や駐車違反)
重たい違反であれば、1回でも不許可になります。
例:飲酒運転など。
重い目の違反をした場合は、帰化申請する時期を相当期間、空ける必要があります。
前科がある
要は警察のお世話になっていないことを証明できればOkです。
軽い罪がある場合は、数年間は申請を待ったほうが良いですね。
普通帰化の対象になる外国人の場合、罪によっては在留資格が維持できない場合もあります。
この場合は再度入国してゼロからスタートとなり、帰化するまでに非常に長い時間がかかります。